『ヤマアジサイ』庭植えでも小さく仕立ててナチュラルな雰囲気に

『ヤマアジサイ』庭植えでも小さく仕立ててナチュラルな雰囲気に
ヤマアジサイ(由布の恵)
ヤマアジサイ(由布の恵)爽やかなスカイブルーの花房は、丹精につくられたツマミ細工のよう

山野草は園芸上級者向きの花と思われがち。
もちろん品種によっては扱いのむずかしいものもありますが、多くは原産地である日本の風土に適した育てやすい植物です。

なかでもヤマアジサイは園芸初心者におすすめ。
庭植えで小さく仕立てる場合はほとんど手がかかりません。
日光を必要とする他の草花の生育がむずかしい庭の日陰に和みの空間を造ってくれます。

ヤマアジサイを庭植えでも小さく仕立てるコツ、これから適期にはいる挿し木での株の増やし方についてお話します。

 

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重要なのは植えつける場所だけ『苗木を庭植えする前にチェックしておきたいポイント』

ヤマアジサイは日陰の花? ● Yes, よりナチュラルな魅力を惹きだすなら思いきった日陰に植える

悲恋小説の影響でしょうか。
日陰の花という言葉は、つらい境遇にじっと耐えしのんでいる哀れなヒロインを思わせます

ですが、ヤマアジサイはあえて日陰の花でいいのです。

ヤマアジサイと軽石に植え付けたミセバヤ
ヤマアジサイと軽石に植え付けたミセバヤ。横に伸びる細い枝先につく淡い小花は日陰の庭を軽やかな印象に。

画像の撮影時刻は朝6時。隣家の家屋との境に位置しているため、日照時間は午前中のごく限られた時間のみ。
また、この上には柿の古木が枝を広げ、さらには山野草の小鉢や苔玉を並べるための棚を設置しています。
ここまで届く太陽の光は、生いしげる柿の葉を抜け、山野草のための寒冷紗を抜け、窮屈に並べられた鉢物の間を抜けてくるごくごくわずかなものです。

植物の生育に太陽光は欠かせません。
草花は日照が不足すると光合成が行えずひょろひょろ徒長し軟弱になります。
花つきも悪くなり、カビから発生する病気にもかかりやすくなるでしょう。

植物にとって大事な光合成を妨げる日陰。
悪条件である日陰にどれだけ耐えられるかを耐陰性といいますが、ヤマアジサイはこの耐陰性が極めて強い優等生です。
どの程度の優等生ぶりかというと、上から箱をかぶせた暗室にでも入れない限り、屋外であれば育ちます。

逆に、長時間にわたって直射光のあたるような場所では、栽培に手間と工夫が必要となります。

アジサイ属は環境適応力が素晴らしく、最初の植え付けさえ失敗しなければおおかたの環境に順応してくれます。
ただし、ナチュラルな庭を目指す場合はより自生地の環境に寄せていくのがよいでしょう。

自生地のヤマアジサイは、山道脇の藪や杉林の根方に群生しています。
生いしげる樹木の影で陽はささず、落ち葉や朽木が堆積した湿度の上がりやすい場所です。

入手したての苗は、かわいくてついつい特等席に置きたくなりますが、そこは我慢。
葉がしげりすぎると柔らかな優しい風情がそこなわれるばかりか、樹勢が増し大きさのコントロールも難しくなります。
また、日照時間が長ければそれだけ葉からの蒸散が激しくなります。人間で言えば、汗ダラダラ喉カラカラの状態です。

水切れに弱いヤマアジサイの場合、思いきった日陰のほうが水やりの手間が省けるため栽培も容易です。
耐陰性に強いアオキ、ヤツデ、シュウカイドウなど。洋風の庭ならホスタやクリスマスローズが元気に育っている場所ならば栽培に向きます。

「あれ?買ったヤマアジサイと違う!」とならないために ● 苗を購入する際は翌年の庭を思い描く

最適な日陰も確保しました。いよいよ植え付けるための苗を準備する段階。
ネットを検索したり、近くの園芸店に出かけたりと最もわくわくする作業のスタートです。

ホームセンターなどで見かけることも多くなってきましたが、これぞといったお気に入りの品種に出会うには、各地で開催される展示会に足を運ぶのがベストです。

なんといっても品種が豊富ですし、実際に開花している状態の株を見ることができます。
プロの育種家や愛好家の方から直接レクチャーを受けるチャンスもあり、楽しく有意義な時間となるでしょう。

可憐に咲く多種多様な花色と花姿のなかから、迷いに迷った末にお気に入りの花を手にしたとき、もう1度だけ庭の植え付け場所を思い描いてください。

具体的には幅と高さ。つまり植え付け場所の上空のスペースです。

ヤマアジサイ展などでさりげなく置かれている鉢には、実はその『さりげなさ』を演出するためのプロフェッショナルな技と経験が隠されています。
風に揺らぐ豊かな里山の緑、陽をうける清らかな小川のせせらぎ、遠くから聞こえる野鳥のさえずり…日本の原風景の一部を切り取って、ほんの小さな一鉢で景色を表現する。
彼らはそのプロ、アーティストなのです。

つまり、普通の栽培方法では、それほど小さく株を育てることはできません。
特に原種に近いナチュラルガーデン向きの品種は庭植えにすると想定外に大きくなりがちです。
元気に育ってくれるのは嬉しいことですが、花を育てるときは、同時に庭を育てるというより大きなビジョンを持つことがとても大切。
これから育てる花や木は、庭の新しいメンバーなのです。

育ったヤマアジサイの枝が通路いっぱいに張りだして通れない。
隣に植えていたヤブコウジやエビネを覆い尽くしてしまった…

翌年にみる、ガーデニングにありがちな失敗例です。
こうなると、ばっさり剪定するか他の場所に植え替えるしかありません。強い刈りこみや植え替えは、せっかく根付いた株にストレスを与えてしまいます。

そんな悲しい事態をまねかないために、苗の購入時には次の2点を確認することをおすすめします。

  1. 剪定を行わない場合、どのくらいの大きさまで育つ品種か

    肥料や日照時間を調整することで大きさをコントロールすることは可能ですが、樹勢の強い大型種は避けるのが無難です。専門家のアドバイスをもらえない状況で購入する際は、葉っぱの大きさからある程度の判断ができます。小葉のものは比較的コンパクトで、また枝もそれほど太くならないため扱いやすい品種が多いです。ネット通販のサイトでは、お客様フォームを設置している販売店もあるので、購入前に問い合わせましょう。

  2. 基本の樹形は、横張り型か、直立型か

    【ハイドランジア】という呼び方のほうが定着してきた西洋アジサイですが、もとは日本のヤマアジサイから生み出された園芸種。それほど手を加えずともあれほど花房も樹もまん丸いフォームを描くとは、アジサイは花を愛する人々の情熱が作り出した傑作のひとつ。バラに肩を並べる日本原産の花木です。
    改良に改良を重ねられ丸くおさまった西洋アジサイと比較して、ヤマアジサイも横張型であるものの枝ぶりはややワイルド。要は枝があばれやすく、キレイに仕立てようと思えばそれなりの剪定がいるわけです。ですが、ここはあえて「お好きにあばれなさい」という広い心で育てましょう。決して手抜きではありません。寛容な心です。
    木性が強く上に向かって伸びる直立タイプ。枝が横に流れやすい開張タイプ。どちらにするか、育ったあとの翌年の庭をイメージしてマッチするほうを選びます。立ち性のものは大きく育つので、庭に奥行きを与えつつ味気ないコンクリート塀などを自然に隠してくれます。横張型のものは草花同様に扱えます。樹形もコントロールしやすいので、はじめてヤマアジサイを育てる方には横張型のコンパクト種が特におすすめです。

庭植えで失敗しない品種選びについてお話してきましたが、花に一目惚れすることはあります。
一期一会。ヤマアジサイは山野草の中でも特に人気が高いゆえに、展示場で偶然目にし心奪われた花に、その後もう2度と会えないということもありえます。
人気種であれば広く流通しますが、育種家が育てたレアな品種となると出会いの機会は限られるからです。

ヤマアジサイ(花笠)
ヤマアジサイ(花笠)純白の花に青いシベがかわいらしい手毬咲き。
雨の庭をしっとり彩るヤマアジサイ
雨の庭をしっとり彩るヤマアジサイ 名前がわからなくなってしまった品種だが、控えめに咲く優しい花姿がお気に入り

花に恋してしまったら、仕方のないことです。だって恋しているのですから。
盲目的に即決で購入してしまっても、それはどうしようもないこと。仕方のないことなのです。

それに、鉢植えをプレゼントされたり、挿し木苗を譲っていただくこともあるでしょう。
コンパクト種ではないケースであっても、それなりに小さく仕立てることは可能です。


ヤマアジサイは手間いらず。お世話は花後の年に1回のみでOKです

地植えで育てているヤマアジサイは30株ほど。
年数が経過して植え付けた年がわからなくなっているものから去年仲間入りしたものまで、新旧入り混じっています。
草丈は大きい株でも50センチ程度。花が終わった後もみずみずしい緑のグランドカバーとして活躍してくれます。

通路脇のヤマアジサイ
通路脇のヤマアジサイ。肉厚でしっかりした葉の品種は強健でグランドカバーとしても

ヤマアジサイの植え付けは、あれこれ手をかけすぎないのがコツ

花付きの鉢を入手したら、植え付け予定の場所に鉢を置き、来年の庭を思い描きながらのんびりと可憐な花を楽しみましょう。
植え付けは花後です。

苗木の場合も、すぐには地植えせず、ポット苗のまま1週間程度は植え付け場所にのんびり置いておくことをおすすめします。
ヤマアジサイの場合まず失敗することはありませんが、山野草栽培のコツはのんびりです。

ポット苗の場合は土が乾きやすいので、晴天が続くようなら朝の水やりだけを続けます。
その頃には、ヤマアジサイも光、風、温度、湿度といった周囲の環境を理解し、受け入れはじめてくれます。

植え付け場所の土は、植物といっしょに時をかけて育てていく感覚で

長らく放置され土が固まり水はけが悪くなったような場所であれば、やや深めに掘り起こして元土との比率が半々になる程度に小粒から中粒の鹿沼土と腐葉土を混ぜ込みます。
市販の植物培養土でも問題ありませんが、肥料が入っているものは避けてください。
これまで花壇であった場所ならば、土に手を加える必要はありません。

元肥は入れません。
あまりに土が痩せすぎているようであれば、腐葉土をすきこみます。
バークではなく、ブナやナラなどの落葉樹から作られた腐葉土を選びます。
日陰の庭では植物の代謝もおさえられるので、多肥は厳禁
肥料あたりで枯らすことはあっても、肥料不足で枯れることはありません。

また、病害虫の駆除薬も可能なかぎり使用しません。
前年の草花において疫病などの発生がみられた場合、竹酢液などで植え付けより早めに土の浄化を行ってください。
この時期はカタツムリ、ナメクジの食害にあいやすいですが、食べつくされるほどの被害はありません。
基本は放置しています。
「どうしても許容できない!」という場合、捕まえて遠くに投げましょう。

植え付け方もいたってシンプルに

苗鉢よりも少し大きめの穴をほり、穴の上で根鉢を半分ほどほぐすことで、もともと植わっていた土が最初に根にあたるようにします。
落ち着いてくると土が締まって下がるので、少しだけ高植えにします。

植え付け後は水をたっぷり与えます。
その後の様子を見て土の乾燥が早いようであれば、株もとを腐葉土で覆ってあげます。

繰り返しますが、このときも肥料は与えません。

水やりも雨にまかせていますが、夏場の日照りがつづく時は、夕方に散水します。

花後は年1回のメンテナンス月 感謝の気持ちでお世話します

5月初旬から6月下旬まで、ヤマアジサイは品種によって次々に開花期を迎えます。
ひとつの品種でも、【七変化】の別名を表すように花色の変化によって違う表情を見せてくれます。
咲き始めからピークに向かうピュアな花色も美しいですが、咲き終わりに連れ退色していくシックな花色にはとても惹きつけられます。
藤紅、梅鼠、月白、錆青磁といった、おそらく和色でしか言い表せない複雑な色合いです。

ヤマアジサイ(白鳥)
ヤマアジサイ(白鳥)おしゃれでエレガントな印象をもつ小型種。花の終わりに近づくにつれ、純白から微妙な色合いに変化する

花が終わる6月下旬から7月の終わりにかけては、ヤマアジサイを剪定する適期です。
手をかけてあげれるのは年に1回、この時期だけですので、梅雨時の庭を彩ってくれた感謝をこめてお世話します。

『剪定は本来しなくてもよい』と理解した上で剪定を

園芸植物の中には、人の手によって切り戻しを行わないと翌年の花が乏しくなるものもあります。
ハイブリッドティ系のバラなどは、冬前に思いきった剪定を行うことで新しいシュート(花枝)の生育を促す必要があります。

ヤマアジサイは基本的には剪定不要です。
剪定によって樹形を整え花数を増やすことはできますが、剪定を怠ったからといって翌年花がつかないということはありません。
特にナチュラルな景色をつくりたい場合は、人為的ではない自然なフォルムを残しておくことのほうが重要です。
自生地のヤマアジサイは、鹿に新芽を食べられることくらいはあるかもしれませんが、剪定などされずとも毎年キレイな花を咲かせます。

よって、剪定は人の都合で行うわけですから、必要ないと判断したものには鋏をいれません。

葉が込みすぎているもの。
背が高くなりすぎて他の品種を覆っているもの。
そして、これは本当にこちらの都合で申し訳ないのですが、挿し木苗を作って株を増やしたいものが剪定の対象になります。

樹形を整えることが目的ではないため、それほど慎重になる必要はありません。
花が終わったものから順番に混んだ枝を間引く感覚です。
透け感が欲しい箇所などの枝を思いきって剪定し、後はそのまま手をつけず残した状態にしています。

庭植えでは、肥料もほとんど必要ありません

実は、庭植えで育てているものには、お礼肥や寒肥などを与えたことがありません。
それでも毎年花をつけてくれます。これは上に生いしげっている柿の木の恩恵かと思います。

この季節、木の周囲には受粉できなかった小さな青柿がポロポロと落ちています。
相当に古い木で品種は不明ですが、実っても渋が完全に抜けないこともあり、毎年2個ほど運試しに食べるだけ。後は枝に残り、そのまま熟し柿となったものをヒヨドリやジョウビタキが突きます。

そんなふうに、あまりパッとしない柿なのですが、秋になると大量の落ち葉で地面を覆ってくれます。
その時期ヤマアジサイや他の植物もまた落葉し、やがて冬が来ると庭は1年で最も陽のあたる季節となります。
雪の降らないこの地域では、厚く積もった落ち葉の発酵が自然にすすみ、有機質を多く含んだ土をつくっているのではないかと思います。

このように、有機質を含んだ土であれば肥料は与えずとも花をつけます。
植え付けた最初の年は肥料を与えずに様子をみられてはいかがでしょう。
落葉するころに、保温も兼ねて株もとを腐葉土で覆ってあげてください。
翌年の花を見て、少し寂しいなと感じられるようであれば、山野草用の置き肥を花後に施す。
この程度の気長さを持つほうが、山野草とは上手く付きあえるかと思います。

ヤマアジサイは挿し木で簡単に増やせます

剪定の際に間引いた枝を使用します。
ですから、剪定の際に切った枝は水を張ったバケツにつけておきます。

挿し木に使う用土には、小粒の鹿沼土を使用しています。
このとき腐葉土は混ぜこみません。

苗用のポリポットでは植え替えが必要になるので、4合程度の駄温鉢を使っています。
鉢が深くなるので底にゼオライトなどの鉢底石を敷き、鹿沼土を入れます。
先にジョウロで水をまき、土をたっぷりと湿らせておきます。

アジサイの枝先から葉を5枚ほど残した位置で斜めにカットします。
カットした位置から下の2枚の葉はちぎり取り、上の葉っぱも鋏で半分くらいの大きさにカットします。

後は準備した土にさし、水を与えます。
鉢は日陰の涼しい場所で管理します。
順調に育てば2ヶ月程度で根付きます。
その間、土が乾ききってしまわないよう水はこまめに与えてあげてください。

 

ヤマアジサイ(去年挿し木した苗)
昨年剪定の際に挿し木したヤマアジサイ。すでに花をつけている株も

ヤマアジサイを育てる上でもうひとつだけ【大切なこと】

結論から言いますと、『買ったときのラベルは必ずとっておく』です。

そんなことかと思われるかもしれませんが、うっかりやりがちな失敗です。
現在では何百種と流通している上、毎年新しい品種が発表されるヤマアジサイ。
うっかり名前を忘れてしまうと後から調べるのは大変です。

庭の花と見比べながらネットで画像検索してみても、ヤマアジサイは土地により、また咲きはじめからの経過により表情を変える花。
画像のヤマアジサイとよく似ているけれど、どうも確信がもてない。
すると庭中にタブン属にカテゴライズされる花が増えていってしまうのです。

下の実例のように。

ヤマアジサイ(乙女の舞)
ヤマアジサイ(たぶん…乙女の舞?)カトレアピンクの愛らしい花をもつ強健種。

最後に、ヤマアジサイを鉢で育てるときのちょっとした工夫について。

鉢での栽培も庭植えとほとんど同じですが、花後の生育期、また冬場の休眠期にも水やりを忘れ枯らしてしまわないように、水の管理が重要になります。

水切れに弱いヤマアジサイを鉢で育てる場合、鉢底石は使用しません。代わりにミズゴケを使っています。
深鉢の4分の1程度までミズゴケを敷きつめた上で土を入れ植え付けています。

乾燥しがちなベランダなどでの栽培にもお試しください。

 

流木を使ってハンギング仕立てにしたヤマアジサイ
流木を使ってハンギング仕立てにしたヤマアジサイ 下垂した枝先につく小さな花が涼しげに風に揺らぐ

 

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